嵯峨野:『平家物語』ゆかりの寺
鎌倉時代の歌人 藤原定家が撰した「小倉百人一首」で知られる「小倉山」の東麓にある古いお寺、祇王寺と滝口寺を訪れるために嵯峨野へ。どちらも『平家物語』ゆかりの寺として知られている。
今回は二尊院前の道を左折して、まずは祇王寺まで向かうことに。この時期の嵐山近辺は修学旅行生で大賑わいだが、落柿舎から二尊院辺りまで足を伸ばすと、次第に静けさが戻ってくる。道は化野念仏寺のある「嵯峨鳥居本伝統的建造物群保存地区」へと続くが、祇王寺・滝口寺へは案内板のある所で西に進む。
辺りは閑静な住宅街で、普段は観光客も少ないようだ。参道は緩やかな坂道で、祇王寺門前の石段へと続く。木々の青葉が暑くなってきた陽射しを和らげてくれる。
祇王寺の 石段のぼり 振り向けば 青葉若葉の 日に照り映えて (畦の花)
「祇王寺」は平清盛の寵愛を受けた白拍子 祇王が、清盛の心変わりのために、母・妹と共に出家し住まいした草庵。近年は苔の美しい庭と青もみじ、秋には紅葉でも知られている。はるか以前に訪れた時も苔の緑が印象的だったが、今は樹木も育ち一段と苔の美しい庭になっている。
訪れた時は、植木職人の方が竹落ち葉を丁寧に掃いて庭の手入れをされていたが、細やかな心配りが感じられるお寺。
訪れる人も少なく、水琴窟の沁み入るような音を聴きながら、ゆっくりと自分の時間を過ごすことができた。
「滝口寺」へは「祇王寺」の参拝口を出てすぐの石段をさらに上って行く。古くは「祇王寺」は念仏道場の「往生院」と呼ばれ、「滝口寺」はその子院「三宝寺」であったため、二つの寺は隣接している。以前の記憶では明るい前庭のある小堂という印象だったが、今は細い石段の参道も樹々に覆われ、鬱蒼とした森の中でひっそりと歴史を刻む史跡の雰囲気。
明治の文芸評論家・小説家である高山樗牛の処女作『滝口入道』で、往生院の存在が知られるようになり、大正12 (1923) 年には小説が映画化 (『瀧口入道 夢の恋塚』) されて訪れる人も増えたようだ。しかしその波も去り、再び「滝口寺」は静寂に包まれている。緑に包まれて河鹿の鳴く声に耳を澄ましていると、いつもより時がゆったりと流れていくようだ。
小倉山 深き緑に 河鹿鳴く (畦の花)
<参考資料>
・祇王寺 参拝のしおり, HP ・滝口寺 参拝のしおり