龍安寺の新しい土塀屋根 (右京区龍安寺御陵下町)

京都・寺社

冬の龍安寺を訪れたいと思っていたが、16年ぶりに石庭の土塀屋根の葺替工事が行われるため、昨年 (2021年) 12月6日より今年3月18日まで拝観停止となり計画は中止に。季節は新緑の頃となってしまったが、折角なので新しくなった石庭を拝見しに行ってみた。

阿弥陀石仏龍安寺垣「きぬかけの路」は世界遺産が点在する道なので、龍安寺も修学旅行生であふれていた。予想以上の人の多さにちょっと躊躇ったが、「ここまで来たんだから」と拝観受付を済ませる。

新緑の美しい参道を行き「三笑橋」を渡った先で、木陰にひっそりと坐す阿弥陀石仏に気づく。以前来た時には気づかなかったのに…。庫裏へと続く石段の「龍安寺垣」も、緑陰の中で風情がある。

油土塀の屋根が新しくなった石庭さて、まずは石庭へ!確かにお庭を囲む龍安寺独特の油土塀の屋根が、以前の落ち着いた渋い黒っぽい色から、目にも鮮やかな真新しい木肌色に変わっている。「金色の」と表現しているメディアもあったが、確かに日射しを受けて輝いているようにも見える。
前回の葺替は2006年というが、ゆっくり腰を落ち着けて眺めていると、以前とは少し風景が違っているような…。「そうだ、塀に被さるように垂れた枝垂れ桜の枝が無い!」実は今回の工事に合わせて、桜を塀から少し離れた場所に移植したという。その理由は「杮葺きが湿気や苔に弱いため、桜の枝が垂れる部分だけ早く屋根が傷んでしまうから」ということらしい。バックヤードで働く人の苦労が推し量られる。

    こけら葺き 光あつめて 風薫る  (畦の花)

ところで、今回の拝観再開に合わせ、細川護煕氏 (第79代内閣総理大臣) から奉納された本堂襖絵「雲龍図」も特別公開されていた。開基細川勝元550年遠忌を記念してとの由。細川氏は、政界引退後は書画・陶芸などの趣味人として生きているようで、勢いある「雲龍図」はなかなかのものだった。

仏殿へ続く廊下龍安寺は朱山の縁にあるため、方丈北側は多くの樹々に囲まれ緑陰の濃さが増す。そんな深い緑の中で垣間見られる仏殿 (非公開) の姿が清々しい。

折しもやって来た団体客で賑わいが増した方丈を後にして、寺域南にあるもうひとつの庭園へ。

 

鏡容池「鏡容池」を中心とした広い回遊式庭園 (国の名勝) に足を運ぶ参拝者は、それほど多くなく気ままに散歩できる。山が近く池もあることから、苔むした庭とそよぐ新緑の香りが心地良い。桜苑や藤棚はもうすっかり葉盛りの時期だが、代わりに池の睡蓮が赤や白のきれいな花を咲かせている。まるでモネの絵のよう。水面ではアメンボ (水澄) が浮かびながら動いている軌跡が、波のように描かれていく。

古くは「おしどり池」として知られた「鏡容池」だが、今はアヒルやカモ、サギなどが羽根を休めにやって来る。アヒルとカモが仲良く泳いでいるのを見ているのもなかなかに楽しい。そして最後は…水分石 (みくまりいし) の上で甲羅干しする亀2匹。確か先回訪れた時もいたような。

  方丈とは違い、静けさを味わえるお庭さん。

水分石 (みくまりいし)と亀万緑を 面に映す 蓮池の 水分石に 亀やすみたり (畦の花)

ふっとNHK Eテレ「2355」で偶然耳にした『龍安寺の歌』(歌:中川翔子) を思い出し「京都右京区 龍安寺 池の南に来てみれば〜♪」と口ずさみながら山門を出た。

  次はやっぱり冬の朝早くかな〜。