法金剛院の ”観蓮会”

京都・寺社

蓮の寺」法金剛院”観蓮会” が7月9日〜7月31日まで行われるというので、ちょっと早起きをして出かけることに。
JR「花園駅」にほど近い法金剛院は、「関西花の寺第一三番霊場」で、特に池を中心として様々な蓮の花が見られることで知られる。ただ蓮の花の開花を見られるのは午前中だけ。しかもコロナ感染が拡大して以来、普段は毎月15日のみの拝観となっているので、これは貴重な機会。

現在表門は閉じられているので、西駐車場からの参道を通って境内に。すでに多くの人達が参拝に訪れている。お堂の前や参道に所狭しと置かれた鉢では、大賀ハスを始めとして実に様々な種類の蓮が見事な花を見せている。苑池の蓮は白い花が多いが、驚いたのはその葉の大きさ。池の鯉も葉陰に隠れて見えないほど。また蓮の花の間に、紫陽花やニオイバンマツリ、ワスレグサ(?)といった花がアクセントとしてあるのも楽しい。

青女の滝待賢門院の歌碑

 

 

 

 

境内北東にある「青女の滝」からは、迸るように清水が流れ、蒸し暑さを一時忘れさせてくれる。池の周りとは対照的に、五位山の麓となる庭園北側には楓などの樹々が木蔭をつくり、石のお地蔵様達も静かに休んでいるようだ。

ゆっくりお庭を散策した後は、やはり御本尊の阿弥陀如来を拝観しなくては!
仏殿に安置されている「本尊 阿弥陀如来坐像」は、大治5 (1130) 年落慶の法金剛院西御堂 (今は池の南西にその跡を残す) の本尊で、発願者は待賢門院、制作仏師は院覚。丈六で「定朝様」の仏像は、古くは平等院・法界寺と共に「定朝の三阿弥陀」といわれたが、長らく重要文化財だった。それが近年再評価され、2020年度に国宝指定となった。
ニオイバンマツリ「定朝様」には平等院鳳凰堂の阿弥陀如来像 (平等院像)とは別に、西院邦恒朝臣堂阿弥陀如来像 (西院像) の様式があるようで、法金剛院の本尊は後者の流れを汲むという。また造像の経緯も勘案されての指定だったらしい。
国宝になってからも以前と同様に間近で拝見できるのがうれしい。阿弥陀如来の前に座して見上げると、ふっと視線が合うような気がして穏やかな気持ちになる。
仏殿はさほど広くはないが、荘厳な瓔珞をまとい美しい厨子に安置された「十一面観世音菩薩坐像」(鎌倉時代)、柔和な老僧の面差しの珍しい「僧形文殊菩薩坐像」(平安時代) そして平安期の仏像の特徴がよく見て取れる「地蔵菩薩立像」などの重文が所狭しと安置されており、つい長居をしてしまう。

仏殿の北にある地蔵院は、通常非公開のため、ガラス張りの扉越しに地蔵菩薩坐像 (重文) を拝見することになる。平安後期の作という丈六の地蔵像は、地蔵菩薩としては最大級とのこと。願いを叶えてくれるお地蔵様ということから、「金目地蔵」「叶地蔵」と言われ古くより篤い信仰の対象となっている。その周りには六道 (地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上) で衆生の苦悩の救済をするため、新たに造像された六地蔵立像が安置されている。

 蓮池に 阿弥陀のすがた 重なりて  (畦の花)

<参考資料>
・法金剛院 参拝の栞
・『法金剛院の阿弥陀如来像における定朝様の影響の再評価について』 松出 洋子(著)(佛教大学大学院紀要 文学研究科篇 第48号, 2020.3, p29-45)