”古今嵯峨米”と嵯峨野の景観保存
二尊院を訪れた折に、本堂でふと目についたのが ”古今嵯峨米" というお米。「嵯峨野の竹を使って栽培されています」というフレーズに惹かれて購入。早速食べてみると、比較的あっさりとした食感で甘味も程良い。原料玄米は京都府産キヌヒカリ100%。生産過程でどんなふうに竹が使われているのか? 興味を持ち、少し調べてみることに。
平成12年設立の「嵯峨地域農場づくり協議会」が、嵯峨地域の美しい田園景観や多様な生物体系の保全を図るため、平成29 (2017) 年より地域資源を活用して環境に配慮した “サステナブル" なお米の栽培に取り組み始める。地元関係者と行政、関係各所によるワークショップで北嵯峨地域の抱える課題の洗い出しがなされ、平成30 (2018) 年より継続的な議論の場として「北嵯峨ラウンドテーブル」が設けられる。そこでは、お米のブランド化のための具体策の検討や自然への影響などの検証が行われてきた。そして令和2 (2020) 年、最初の「古今嵯峨米」が収穫。
では、どこが “サステナブル" なのか?
1 放置竹林や耕作放棄地に手を入れて再生 → 発生した「枝葉」を動物園の象の飼料として提供 → 象の糞を有機質肥料「嵯峨嵐山産象糞」として耕作に利用
2 竹林や耕作地の再生過程で発生した「稈 (かん, 竹の茎)」をチップ化し、ケイ酸性肥料として耕作に利用、YM堆肥・乳酸菌も施肥
3 以上のように有機質肥料を施肥することで農薬・化成肥料を5割以下にし、収量の増加・味の向上により稲作の魅力向上と後継者育成につなげる
4 生産されたお米は観光地である嵯峨嵐山で地産地消され、同時に景観・生物多様性の保全・再生も図られる
色々と調べていく中で、大好きな嵯峨野の景観が、多くの人達の奮闘と努力によって保持されていることがよくわかった。” SDGs ” とか “サステナブル" といった言葉がやたらもてはやされる昨今だが、そのためには地道で継続的な努力が必要なのだと感じる。次に嵯峨野を散策する時は、その光景が以前とは少し違って見えるような気がする。
<お米屋さん>
京都に転居して以来、お米は近所のお米屋さん「たなべ米穀店」さんにお世話になっている。以前はお米はスーパーで買うものだった。近くにはお米屋さんが無いから。でも京都は神社・寺院が多く、観光客も多いからか、街のあちこちでお米屋さんを見かける。
「たなべ米穀店」さんは、日本米穀小売商業組合が認定する「お米マイスター」で、生産者の人達との交流や地域の小学校での食育授業のお手伝いなど積極的に活動している。私のお気に入りは、異なる生産地のお米を月替わりのように提供している商品。" 今回はどこのお米かな?" とお米を買いに出かけるのが楽しい。分けても地元のお米の時は、地産地消ができているようで嬉しい。
<参考資料>
・ 令和2年度京都市景観白書 41(6)田園風景保全の取組
・ " 多様な主体の協働による資源循環型農業の成立とメディエイターの役割 : 京都市北嵯峨・歴史的風土特別保存地区内の景観保存の取組 “ 渡邊大郎, 山口敬太, 谷川陸 共著 ( '日本都市計画学会 都市計画報告集’ No.20, 2021,8 )
・ " 嵯峨嵐山の稲穂たなびく景観保全と地域農業の活性化 “ 嵯峨地域農場づくり協議会