花の寺(勝持寺) (西京区大原野)
阪急京都線で東向日まで行き、そこから阪急バスに乗ること約20分。南春日町でバスを降りてなだらかな上りになっている道を15分ほど歩いて行く。水を張った田では、カエルが賑やかに合唱し、鶯の囀りが山に木霊している。すれ違う人もほとんどなく、観光客でごった返す京都の街中とは全く異なる静かな風景には「鄙の里」という言葉がふさわしい。
「京春日」と称される大原野神社を右に見てさらに進むと花の寺への石段だ。石段の上には仁王門。ここからが参道で、南門までは鬱蒼とした森の中の急な坂道をさらに15分ほど登っていかなければならない。覆いかぶさるような新緑の樹々の間からは明るい五月の陽光が射している。二月中は拝観中止のようだが、確かに雪の多い季節に訪れるのは極めて困難なことだろう。
境内は静寂に包まれている。拝観が許されている瑠璃光殿の正面には本尊の薬師如来像が配され、その左右に日光・月光菩薩像。その如来と菩薩を十二神将像が守護し、左右の奥には、威圧感溢れる金剛力士像が置かれている。以前は仁王門に安置されていたらしい。このお寺で出家をしたという西行の坐像を見ながら、彼の当時の思いやいかにと考えてしまう。
庭の正面に「西行桜」。太い幹は苔むして、大きく枝を広げている。花咲く頃はさぞかし美しいことだろう。向かって右手には不動堂。お堂の背面の岩窟中に石に刻まれた不動明王が安置されているが、その素朴な姿が何ともこのお寺に似つかわしい。庭の下方には「冴野の沼」が広がり、水際では鴨が2羽静かに羽を休ませている。街の喧騒を離れて静かに自身と対峙するにはまさにぴったりの場所。