千本釈迦堂「六道まいり」
8月8日夕刻。お釈迦さまのご縁日なので、千本釈迦堂 (大報恩寺) のお盆精霊迎え「六道まいり」に参詣。
京都では、盂蘭盆に冥土から先祖の霊「お精霊 (しょらい) さん」が「六道」に迷うことなく戻ることができるように加護し迎えることを、「精霊迎え」あるいは「六道参り」と言う。なかでも小野篁と閻魔法王の伝説で知られる「六道珍皇寺」や「千本ゑんま堂 (引接寺)」は有名だが、「千本釈迦堂 (大報恩寺)」 の由来は少しばかり変わっている。
<六観音信仰>
平安時代後期の10世紀頃。貴族社会に 「六道輪廻思想」 が広まり、「六観音」 が六道 (地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道) にある衆生を救済すると信仰されるようになり、やがて数多くの六観音像が造立された。
しかし現存するものはほとんど無く、千本釈迦堂に完存する 「六観音菩薩像」 (2024年に国宝指定) は、造像当初のものが残る奇跡的な作とも言われる。
平安からの 「六観音信仰」 を今に伝えるのが、「大報恩寺」 の 「六道まいり」 なのだろう。その 「六観音菩薩像」 は、「聖観音 (地獄道)」「千手観音 (餓鬼道)」「馬頭観音 (畜生道)」「十一面観音 (修羅道)」「准胝観音 (人道)」「如意輪観音 (天道)」の六躯。
参道そして山門には、灯りのついた四角い紙灯篭が吊り下げられ、すでに盂蘭盆会らしい感じがする。山門を入ると、普段は閉まっている本堂正面の扉が開けられ、「千本釈迦堂」と書かれた赤い提灯が掲げられている。
8日から16日まで、本堂 (国宝) が無料開放され、秘仏のご本尊「釈迦如来坐像」(重文) も御開帳となる。階段を上がった先に「精霊迎え鐘」があるので、まずは目の前にある紐を引いて鐘を撞く。この鐘には白い布がつなげられており、その先は内陣の厨子に坐す「釈迦如来坐像」の手に結ばれている。正面には卒塔婆を納める台が設えられ、右側には聖観音菩薩立像が祀られる厨子が扉を開けて置かれている。まだ新しい造像のようだが、優しく穏やかな表情が印象的。
秘仏「釈迦如来坐像」 は、13世紀鎌倉時代に快慶の弟子 行快によって造像された。やや切れ長で目尻が少し上がった目が、凛々しさを感じさせる。右手は施無畏印、左手は与願印を結び、右手に白い布が掛けられているのが見える。厨子の扉の内側には、彩色や金箔が施されているようだ。
ご縁を結ばせていただき、貴重な体験ができたことに感謝。
<参考資料>
・ 「精霊迎えと六道まいり【千本釈迦堂】」 京都観光Navi イベント情報, 京都市観光協会
・ 「六観音菩薩像のお背中、ついに公開」 1089ブログ, 東京国立博物館