北野七夕祭・萬燈会
千本釈迦堂の「六道まいり」に参拝した際に、六観音菩薩像とゆかりの深い北野天満宮にも参拝。北野天満宮 では七夕祭が始まり、北野萬燈会でライトアップされた境内では「御手洗川足つけ燈明神事」も行われている (8月2日〜18日)。
夕刻の静かな五辻通りを散歩しながら北野天満宮「東門」に到着。鳥居にも東門にも七夕祭の笹飾りが付けられて、なんだか楽しそう。境内からは賑やかな様子が伝わってくる。拝殿前の灯篭には明かりが灯され、国宝の本殿を改めて見ると日中とはまた違った落ち着きのある美しさだ。参拝者も昼間ほどに多くはないので、じっくり本殿を拝見できた。
< 「北野祭」 と 「御手洗祭」 >
8月7日に行われた「御手洗祭 (北野御手水 (おちょうず) 神事)」は、毎年9月4日に行われる例祭「北野祭」に先立つ 「禊祓 (みそぎばらい) の御祭」 で、古い歴史を持つ当宮の重儀という。
祭典は、神前に菅公遺愛の松風の硯、角盥 (つのだらい)、水差しに梶の葉7枚および季節の野菜や御手洗団子などをお供えして執り行われる。「梶の葉」は古には短冊として使用されており、儀式の中では道真公自身の和歌が読み上げられるようだ。「どうぞまた歌をお詠みください」と菅公に語っているのかもしれない。
<御手洗川足つけ燈明神事>
平安時代、現在の千本丸太町付近にあった大内裏 (大宮御所) の「御用水」は、衣笠山を源泉として北野天満宮東側 (当時の西大宮川) を経て、北野神域で清めそして用いられていた。また、境内西側には御所に献上する紙漉き場があった紙屋川も流れ、東西を清流に囲まれた「清らかな社」北野社では、「御手洗祭」に併せて「御手洗川」で清めの足つけ禊神事が行われていたという。
平成28 (2016) 年、「御用水」の流れをくむ「御手洗川」が整備・再興され、明治以降縮小されていた神事が改めて「御手洗川足つけ燈明神事」として斎行されるようになった。
「足つけ燈明神事」の受付が行われる「絵馬所」から「三光門」に至る参道の両側には、多くの奉納提灯に明かりが灯され、笹飾りが七夕らしい雰囲気を盛り上げている。また「御手洗川」を上がった先にある「紅梅殿」内も明るく照らされて、昼間とはまた違った趣きがある。
「絵馬所」から「梅苑」に向かう途中の「文道会館ホール」では、「天神様の大衆信仰」 をテーマとした展示会 (無料) が、北野夏祭り期間限定 (8月2日〜8月18日) で行われていたので観覧。月岡芳年の浮世絵『皇国二十四功』にある「贈正一位菅原道真公」図を始めとし、江戸後期から昭和初期にかけて菅原道真が「偉人」として大衆に信仰されるようになったことを示す美術品など (浮世絵・双六や教科書など) が展示されていた。「学問の神様」としての菅公像の成立過程の一端を知ることができる。
帰り際に「一の鳥居」を振り返ると、鳥居横には 「北野七夕祭」 の幟が立てられ、夕闇迫る空に笹飾りが風に揺れてキラキラ光っていた。幟には菅公の歌。
彦星の行あひをまつかささぎの 渡せる橋をわれにかさなむ
京の都に帰ることを願いつつ失意のうちに大宰府で薨去した菅公の心情を思うと、少しばかり境内の華やかさに違和感を覚えるのは私だけか?ただ、「北野七夕祭」も2010年より始まったイベント「京の七夕」のひとつに過ぎないのかと内心思っていたので、改めて古い歴史を持つ神事であることを知ることができたのは良かった。
<参考資料>
・ 北野天満宮 website ・ 『北野祭』北野天満宮パンフレット
・ 『北野御手水神事(北野御手洗祭・足つけ燈明神事)』 京都芸術大学通信教育課程 Blog, 2018.11.2