夏にお別れ、やっと…秋!
今年 (2024年) の京都の夏は猛暑続き、しかも長かった。例年であれば朝晩は涼しくなる10月に入っても、真夏日が続いた。京都地方気象台によれば、2024年の真夏日の日数が過去最多を更新したという。
ところが、11月7日 (金) には最高気温がぐっと下がり、強風が吹いた。「木枯らし1号」が東京・近畿で吹いたと気象庁は発表。折しも11月7日は二十四節気が「立冬」へと変わり、暦の上では冬の始まり。秋の気配も感じない内にもう冬!?
そろそろ夏を締め括り、秋の訪れを味わう頃。
紫陽花に 五月雨残す 雫かな
百日紅 夕日に染まり 紅 (あか) を増す
木槿咲く 朽ち行く花に けふは無く 盛りの花は くれなゐにほふ
青き空 仰ぎ見つめる 芙蓉かな
アオイ科フヨウ属の木槿 (ムクゲ) と芙蓉 (フヨウ) は、暑い夏にも美しく咲いて一抹の涼を与えてくれる。「槿花一日の栄 (きんかいちじつのえい)」と例えられるように、その花は朝に咲き、夕刻にもなるとしぼんでしまう一日花。しかし次の日にはまた新しい花を咲かせ、その生命力は逞しい。散歩道に咲く芙蓉は、11月に入っても美しいピンクの花を咲かせて楽しませてくれている。
送り火の 消ゆる濃闇 (こやみ) に 虫の声
亡き人の 命日知るや 法師蝉 われに代わりて 経を読む
こどもの頃、ツクツクホウシの鳴くのを聞くと「ああ夏休みも終わりだ〜」と思ったものだ。ツクツクホウシ (法師蝉) や蜩 (ヒグラシ) は、秋の季語となり、夏の暑さに倦んだ心に涼しさを感じさせてくれる。しかし今年の夏は猛暑続きだったせいか、我が家の辺りでは殆どその声を聞くこともなかった。
ところが、五山送り火で嵯峨鳥居形に護摩木奉納のお願いに行った時のこと。清凉寺から八体地蔵尊の祀られる辻に向かう途中、「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ…」あの懐かしい鳴き声!やはり奥嵯峨は山里。
フジバカマ 萩オミナエシ 風にゆれ 小塩の空に ツバメ飛び交う
曼珠沙華 屹然と立つ 池の端 鰯雲降り 白波となる
京都自生の藤袴が咲くのを見たくて、今年は「大原野フジバカマ園」と梅小路公園の「朱雀の庭」に出かけた。今年が最後となってしまう「大原野フジバカマ園」では、藤袴のみならず珍しい秋の草花を見ることができた。小塩山の裾野に広がる大原野は、空も田畑も広々としてなんとも心地よい場所。また大原野とは対照的な街中の「朱雀の庭」は、意外にも自然豊かな庭園で、秋の七草や山野草に出会えた。そして何よりも今年もアサギマダラを見ることができたのは、嬉しい出来事。
キンモクセイ ほのかに香り 十三夜
電車道 白粉花 (おしろい) ゆれて 夕明り
十三夜には栗ご飯を食べ、朝夕少しずつ涼しくなり始めた頃。あちらこちらの垣根からほのかに漂ってくる甘い香り。金木犀の香りはまさに秋の代名詞!オレンジ色の小さな花も可愛い。金木犀の香る期間は短いが、夕方から朝にかけて咲く白粉花にもほのかに優しい香りがあり、しかも11月に入っても元気よく咲いている。嵐電の線路の土手で、夕暮れにひっそりと咲く白粉花の群れは見応えあり。
「木枯らし1号」が吹いた立冬の日は、七十二候が第五十五候「山茶始開 (つばきはじめてひらく)」に入った日でもある。「山茶」は「つばき」と読むけれど、日本で言うところの “椿” ではなく、ツバキ科のサザンカのこと。
偶然立冬の日に訪れた奈良の西大寺では、時折吹きつける風の中で白いサザンカが美しく咲いていた。… 冬の足音を聞いた日。 (畦の花)