真如堂 ”うなずきの弥陀” に会いに

京都・寺社

 11月15日(金) は、「真如堂 (真正極楽寺)」 「お十夜 (十日十夜別時念仏会)」 結願の日。一年でこの日だけ秘仏御本尊の阿弥陀如来立像が安置されている御厨子が開けられ、内々陣より間近に拝観できるというので参拝に出かけた。

「錦林車庫前」バス停から住宅街の坂道を8分程歩き、北側から本堂への参道に到着。本堂前には二本の回向柱 (えこうばしら) が立てられ、白い布の長い綱 (善の綱) が結ばれている。これは本堂内に祀られる秘仏本尊「阿弥陀如来立像」の右手に繋がる。「善の綱」に触れると御本尊に直接触れるのと同じご利益があるとされ、11月5日から15日まで設置される。参道両側には、中風封じ・タレコ止め の十夜粥 (小豆粥) や十夜柿、十夜多幸 (蛸) を供するテントが並び、次々と参詣者が本堂へと入っていく。
    * 「タレコ止め」 年老いても下の世話にならず、健康で元気に過ごせること

本堂前
本堂からは愛宕山が見える

 

 

 

 

 

 

 本堂内は、裃を着た鉦講の方々の打つ十夜鉦の独特な低いガーンガーンという音とともに、「阿弥陀仏」と唱えているようにも聞こえる小さなお念仏の声が響き渡り、厳かな気持ちになる。参拝者は背中に南無阿弥陀仏と書かれた袖無し白衣 (肩衣?) を着て、内陣東側から内々陣へと順に進んでいく。内々陣には贅を尽くして荘厳された宮殿 (くうでん) があり、脇にある階段を上がって初めて御本尊の前に立つことができる。阿弥陀如来の右手には五色の綱が結ばれ、その先は白い「善の綱」と繋がり本堂から参道の回向柱まで続いている。参拝の後には「十日十夜別時念佛会 決定往生之符」と書かれた御札をいただける。


 初めて拝観する阿弥陀如来立像は、平安時代に天台宗の慈覚大師円仁が造ったとされる (重文)。ふくよかな体躯にゆったりとした衣を纏い、九品来迎印を結ぶ。穏やかな相貌だが、額に白毫がない。これは「うなずきの弥陀」 と呼ばれることと深い関わりがあるらしい。
 阿弥陀如来立像に向かって左側には、安倍晴明の念持仏であった不動明王、右側には伝教大師最澄作と伝わる千手観音立像が脇仏として安置されている。どちらも平安時代の造仏だが、厨子を開けられることが少ないせいか、色彩もとてもよく残っている。

 宮殿西側の階段を降りて外陣に出ると、内陣との結界には明和4 (1767) 年に作られた縦5m・横4.4mの大きな 「観経曼荼羅」 が吊るされている。「観経曼荼羅」は、『観無量寿経』の所説を図絵にしたもので、天平時代の作とされる「当麻曼陀羅」が有名。金糸をふんだんに織り込んだ曼荼羅はとても煌びやかだ。
 次に内陣で改めて阿弥陀如来立像を仰ぎ見、焼香させていただく。右脇壇の前には、室町時代に真如堂で「お十夜」を最初に始めた 平貞国 の肖像と位牌が置かれた供養壇がある。

 午後からは稚児行列があり、その後に一山の僧侶の方々の行道が続いて本堂内で結願大法要が行われると聞く。午前中の参詣だったので、法要の様子は拝見できなかったが、貴重な体験をさせていただいた。

    月影や外は十夜の人通り   正岡子規
 人生の晩年を病床で過ごした正岡子規には「十夜」の句が多い。

<参考資料>
   ・ 真如堂  拝観の栞, website
   ・  『京の暮らしと和菓子』  29-1, 2   (「瓜生通信」 京都芸術大学)