“冬もみぢ” そして “冬の桜”へ

京都・寺社,京あれこれ

<洛北の “冬もみぢ" 堪能!!>
 昨年12月も半ばを過ぎた頃、洛北 「狸谷山不動院」 に参詣。12月30日まで本堂の洞窟内陣にて本尊「狸谷不動明王」を間近に参拝できるとのことで、叡電の「もみじのトンネル」ライトアップシーズンが終了するのを待って訪れた。

 「詩仙堂」 「八大神社」 から続く急坂を歩いていくと、やがて人家が途絶えた辺りに 「狸谷山不動院」 参道の常夜燈が見える。参道の擬宝珠のある石柱には紅葉した蔦がからまり、冬日を受けた楓が空を隠すようにキラキラと光る。左手に朱の色も鮮やかな立派な社殿が見え、本堂かと思ったら「交通安全自動車祈祷殿」だった。後方を振り返ると、北山から西賀茂にかけての山並みがまさに錦の如く色づいてとてもきれいな眺め。駐車場にはピンクの茶梅も咲き、冬の訪れを知らせている。

自動車祈祷殿からの眺望

 鬱蒼とした樹々に囲まれた参道をさらに上ること5分ほど。やっと本堂への鳥居が見えてきた。鳥居の前には無数の大小様々なタヌキの置物。そして最後に待つのが250段の石段!!しかしその途中には、「白龍弁財天」や参拝者を励ましてくれる「お迎え大師」「弘法大師 光明殿」などがあるので、拝観しながら登っていけばいつの間にやら「あっ、本堂だ!」って感じ。

 

懸崖造りの本堂

 岩盤斜面の洞の中に祀られている本尊「不動明王」を守るために築造された本堂は、懸崖造りとなっている。石像のご本尊は、思っていたよりも大きく、仄暗い内陣で一際存在感を放つ。燈明で光る鋭い目には凄みがあり、独特の雰囲気を感じる。本堂の西側に設けられた休憩所からは、京都の街中が眺望でき、なんとも心地良い開放感を覚える。

 

 

八大神社

 帰途 「八大神社」 に立ち寄る。一乗寺地区の産土神が祀られる 「八大神社」 は、剣聖宮本武蔵が、かの「一乗寺下り松」での吉岡一門との決闘の際に参拝した神社。「詩仙堂」に隣接する鳥居をくぐると、境内は思っていたよりも広く、とても立派な社殿が建っている。社殿前の石段には、紅葉した楓や菊の生花がさりげなく飾られて季節感溢れている。本殿の後方にある濃い赤の楓、東側に並ぶ末社の傍の、黄色・朱色の中にまだ少し緑色の葉も残る楓が冬の陽射しの中で煌めき光る様はとても美しい。また、東側の小高い場所にある摂社の「常磐稲荷社」に通じる参道にはきれいな「散りもみぢ」。瑞垣の朱色とのコントラストが初冬の風趣を感じさせてくれる。

 

 

 

 

詩仙堂庭園

 静かな境内にまで響く「詩仙堂」の「ししおどし」の音を聞きながらふと見れば、垣根越しの「詩仙堂」のお庭の紅葉もきれいだった。

 

 

<クリスマスに出会った “冬の紅 (黄) 葉">
 クリスマスの日、久しぶりに寺町通・新京極通の寺社を訪ねてみる。
 豊臣秀吉が京都の都市改造に着手した時に、寺院を集めて一大寺院街を造営した「寺町通」。今では「寺町京極商店街」としてとても賑わっている。静かに風情を味わえる場所ではないが、歴史ある寺社も多い。

本能寺山門

 まず訪れた 「本能寺」 。表門に立つと、本堂前に立つ立派な石灯籠と松の植え込み、その下にある紅葉が目に入る。どうやら南天のようだが、鮮やかな朱色が冬色の背景によく映える。境内東南端にあるビルの谷間の大イチョウ 「火伏のイチョウ」 (京都市指定保存樹) は、すっかり葉を落としていたが、樹高約18メートルの巨木はなんとも堂々とした姿。黄葉の盛りを見てみたいもの。
 帰り際、宝物館と塔頭寺院の間の参道の突き当たりに小さなお庭発見!塀際の十三重塔を飾るように、"冬もみぢ” が鮮やかな朱色を見せている。塔の下には散りもみぢ。手前の石灯籠とのコンビネーションもなかなか。訪れる人もまばらな境内で、秋の名残を楽しませてもらった。

天性寺の弁天堂

 三条名店街近くにある 「天性寺」 は、道路より少し奥まった場所に山門がある。枝ぶりの整った松がある境内が心地良さそうで、参拝させていただいた。本能寺同様に周りはビルに囲まれているが、境内は静かでゆったりとした時が流れているようだ。
 浄土宗 「天性寺」 は、室町時代後期に大和當麻寺念仏堂の院主 眼誉道三和尚によって建立されたという。眼誉は「當麻曼荼羅」を京の人々に絵解きし、浄土往生を説き勧めたとされる。境内の東奥には池があり、その畔には 大和天河弁財天 を祀ったお社。池の傍には黄葉する柳、そしてお社の近くには散り始めた “冬もみぢ”。冬の訪れを知らせる赤い山茶花は、これから盛りを迎えるのだろう。

 一歩寺町通に出れば、開店し始めた商店街はクリスマスを楽しむ人々や外人観光客で賑わいを見せ始めていた。ビルの立ち並ぶ街中でも、自然は静かに四季の移り変わりを感じさせてくれる。

仁和寺の十月桜
ミツバツツジ

<年明けて “冬の桜" を愛でる>
 よく晴れた元日。「仁和寺」 に初詣。観光客らしき人達の姿もあり、そこそこの賑わい。金堂前の石段近くで、ミツバツツジが一輪、紫がかったピンクの花を咲かせているのを見つけて、ちょっとビックリ!陽当たりの良い場所なので、早咲き?
 いつものように「水掛不動尊」にもお参りしての帰り道。「令和阿弥陀堂」前の十月桜が、まだまだ小ぶりだけれど愛らしい花を咲かせていた。

西寿寺の十月桜

 正月三が日も過ぎた日曜日。久しぶりに 「西寿寺」 に参詣。山門に近づくにつれ、東側の桜苑の十月桜が咲いているのが目に入る。境内の所々に植えられた桜も開花。西寿寺の冬に咲く桜を見ていると、健気で可愛くて… なんとなく勇気をもらえる気がする。

 

 

 

     蔦紅葉 擬宝珠に緋 (あけ) の 色添えて  (畦の花)