梅とネコと:梅宮大社

2025年の梅の開花は、2月の寒さで平年よりも遅れていた。北野天満宮「梅苑」も、公開当初はまだ蕾がほとんどの状態だったようだ。3月半ば、ご近所の梅もチラホラ咲き始めたので、暖かい日を選んで梅宮大社まで観梅に出かける。

「一ノ鳥居」から続く参道には、山茶花と梅が交互に植えられ、紅と白、淡いピンクの花の彩りが印象的。山茶花の紅い花びらが散り敷いた様子も、この時期ならではの光景。楼門 (随身門) 前のピンクの枝垂れ梅は、思いの外よく咲いている。その後方では 「神苑」 の梅がもう顔を覗かせ、「早くいらっしゃい」と誘っているようだ。
拝殿には今年の干支「巳」と「梅」をデザインした立派な大絵馬が飾られている。まずは御本殿に参拝。境内のあちらこちらでも、紅、白そしてピンクの梅が咲き競い、これだけでも見応え十分。結婚式の前撮りをしていたカップルも、満開の梅に囲まれて幸せそうな笑顔。
「またげ石」近くには八重の白梅。その楚々とした雰囲気と趣ある拝所回廊の瑞垣を眺めていたら、若くして賀茂斎院となり波乱の多い生涯を送った式子内親王の歌をふと思い出した。
ながめつる けふは昔に なりぬとも軒端の梅は われを忘るな 式子内親王(新古52)

《 神苑へ 》
梅宮大社の庭園 「神苑」 の入り口は境内東側にあり、本殿の三方を東→北→西と巡るようにお庭が造られている。茅葺き門の左側には大きな白梅。そして右側に咲く黄色の花は黄梅かな?門をくぐる前から色とりどりの梅が目に入る。
[ 東神苑 ]


御祭神の一柱 “木花咲耶姫命 (このはなさくやひめのみこと)" に因んで名付けられた「咲耶池」を囲むように、色も形も様々な梅が見事に咲いている。境内全域で60種600本ほどが植えられていると言われるが、そのうち約40種が「咲耶池」周辺で見られるらしい。
池の中島にある茅葺き屋根の茶席「池中亭」へは、石橋を渡って行ける。趣ある「池中亭」の辺りには、梅に隠れるように椿の花もよく咲いており、社殿横の梅がまるで花霞のようだ。池の東端まで行って庭園入り口の方を望めば、門の横に植えられた松の緑と紅白の梅の取り合わせが、嵐山を借景として実にしっとりとした味わい。平安人も同じような風景を見ていたのだろうか…。よく見れば、すぐ近くには白とピンクの源平咲きの梅!

[ 北神苑 ]

池の北側にある「参集殿」近くでは、枝垂れ梅と椿が色を競い合っている。その西側にある「土俵」近くで、蝋梅がまだ咲いているのが目に止まった。中国では「雪中の四花」のひとつとして尊ばれている蝋梅だが、最近は蝋梅から生まれたソシンローバイの方が多く、蝋梅に出会える機会も少ない。花全体が黄色のソシンローバイと違い、外側の黄色の花びらに包まれた中心部が赤紫色なのが特徴的。古い歴史を持つ梅宮大社ならではか?すぐ横で咲く黄梅と濃い桃色の梅も目を惹く。
ちょうど本殿の裏側にあたる北奥にあるのが「勾玉池」。池の周辺には花菖蒲や紫陽花、藤などが植栽されているが、寒い時期は池の水も抜かれて常緑樹の緑が目立つ。


[ 西神苑 ]
西神苑は竹林で外部と遮断され、ここまでのお庭とは少し趣が異なる。下草の生い茂る空間に、多様な梅と椿が咲き競って目を楽しませてくれる。椿の中には、後水尾天皇が好んだと言われる「日光椿 (じっこう, にっこう)」もある。二つ折れの唐子弁が花芯に美しく重なった独特の形は、目を引く。
下草の緑に目を遣れば、散り敷く椿の花たち、そして水仙や白いタンポポなど春の息吹を感じさせてくれる草花があちらこちらに…。
< おまけのネコたち >
十分に梅の春を楽しませていただいて 「神苑」 を出ると、待っていたのが可愛いネコ達。NHK『岩合光昭の世界ネコ歩き』で紹介されて以来すっかり「猫の神社」として知られるようになった梅宮大社。暖かかったこともあり、社務所前では5, 6匹のネコ達がのんびり寝そべったり、お散歩したりとなんとも長閑な光景。大切にされているので、人にもよく慣れていておとなしい。
しばらくネコ達と遊んでの帰り道。楼門を出た西側にある 「西梅津神明社」 にも参拝をと覗いてみると… あらら、お社で堂々と日向ぼっこするネコがいた!そばの生垣近くには、餌箱や水飲み器まである。きっとご近所の人達にも可愛がられているんだろうな。どうやら “ハチちゃん" という名前らしい。