『鹿男(しかおとこ)あをによし』
まずタイトルを見て感じたこと。「鹿男」って人名?それとも何か別のもの?
大学の研究室で助手との関係が上手くいっていない「おれ」が、教授の計らいで2学期だけの常勤講師として奈良の女子高校に赴任するところから物語は始まる。
東大寺近くに下宿した「おれ」は、ある日大仏殿の裏の原っぱで2頭の鹿に声をかけられる。鹿は「おれ」が「目(神宝)」の“運び番”に選ばれたので、伏見稲荷の狐の“使い番”から「目」をもらって来るようにと告げる。しかもその役目が首尾よく果たされないと、人間世界に大きな災いが起きると脅すようなことまで言う。
ここから一挙に二つの世界が交錯し、物語が展開する。高校の教頭、同僚の藤原先生や下宿の重さん、教え子で鹿の“使い番”になる堀田イト、姉妹校の剣道部顧問の教師であるマドンナなどが「おれ」の任務遂行に大きく関わってくる。任務が暗礁に乗り上げると、「おれ」の顔が次第に「鹿」に変貌していくが、それは他の人間には見えない不思議。はてさて結末はどうなるのか…?現代版『坊ちゃん』風な味わい。
NHK京都の「劇解!KYOTO CODE」を見ていて、偶然にも著者「万城目学」さんを知る。「万城目学」?どこかで見たような…本棚の隅に『鹿男あをによし』発見!以前、知人にもらったが、もともと現代小説はあまり読まないし、表紙の絵も私の趣味でないからと読まずに忘れていた。ところが読んでみると、なかなかに面白可笑しい。以前訪れた東大寺界隈や平城京跡も懐かしかった。次は『鴨川ホルモー』でも読もうかナ…。
* 『鹿男あをによし』 万城目学著 幻冬舎, 2010.4 (幻冬舎文庫)