新緑あざやかな西寿寺 (右京区鳴滝泉谷町)

京都・寺社

西寿寺山門連休中の人混みを避けて、静かに新緑を楽しめる泉谷 西寿寺を再訪。モミジの実
山門に向かう下り坂では、杉や楓の木立の中、梢を渡る鶯が綺麗な声を響かせている。参道の石段は青モミジのトンネルの風情。爽やかな五月の風に青葉が揺れて、陽射しを和らげてくれる。よく見ればモミジには赤い可愛らしい実がつき、石段のあちらこちらには、小さなモミジが芽を出して … 自然の営みはスゴイ!

本堂左手の山肌には、ピンクの躑躅が今を盛りと咲いている。生垣に咲く躑躅を見慣れている目には、手も届かない高い所に咲く躑躅の光景がとても新鮮。

 時をこえ ほとけも愛でる 山つつじ   (畦の花)

今回は霊園の一番高い所まで上らせていただくことに。まずは中腹にある「三光石神社」に参拝。「三光石」は、西寿寺建立の際に土の中から現れた星・月・太陽をかたどった輝く霊石のこと。霊石の下から泉が湧き出たことから、山号も「泉谷山」と改められたという。その「三光石」を御神体として祀ってあるのが鎮守社「三光石神社」。2016年の修理の際に、元禄14(1701) 年9月16日の建立で、屋根の「木賊(とくさ)葺き」は現在では全国でも数少ない珍しいものであるとわかったという。
三光石神社また明治の神仏分離まで、この神社では釜を焚いた時に鳴る音の強弱・長短等で吉凶を占う「鳴釜神事」が行われていたようで、修理完了後はこの「鳴釜神事」も復活された。

【木賊(とくさ)葺き】
板葺の一種である「こけら葺き」のひとつで、木賊葺きは板厚4〜7㎜の木賊板を使用している。「こけら葺き」には他に、最も薄い板(厚さ2〜3㎜)を使用する「杮(こけら)葺き」と板厚10〜30㎜の板を使用する「栩(とち) 葺き」がある。

霊園中央には、開山・岱中上人を始めとする歴代住持のお墓が並ぶ。通路傍に「空洞居士歴代住持のお墓之墓」と刻まれた古いお墓。その手前には「桑原空洞先生之墓」の石柱もある。「桑原空洞先生」と言えば、西寿寺の南西に隣接する法蔵禅寺(法蔵寺)に、尾形乾山から家を譲り受けて住んでいたこともある人物。この地を永眠の地としたんだ…。

【桑原空洞(くわばら くうどう, 1673-1744
江戸時代中期の書家・儒者。名は守雌、字(あざな)は為谿(いけい)で、空洞は号。『近世畸人伝(正・続)』によれば「浪華の人で、篆隷八分の諸体を極めた。また三論を持し、老荘を主とする。洛西泉谷の山中に庵を結び、妻子は無し。仁和寺門前にあった尾形光琳の家に住んだこともあり。」(摘記)とのこと。儒を合田晴軒に学んで私塾をひらき、月海元昭(高遊外・売茶翁)・百拙元養らとも親交があった。著作に「亀毛(きもう)録」「篆隷(てんれい)字原」などがある。

新形式のお墓

双ヶ岡に京都タワー西寿寺は、新しい葬送の在り方と取り組んでいる寺院のようで、伝統的な墓地と並んで「藤の苑」・「桜の苑」などの新形式の墓地やペットの墓地などがある。明るく開放的な墓地で、眼下には京都の街並みが広がる。手前には緑に染まる双ヶ岡、その奥に立つのは京都タワー。東山から西山へと連なる山影も一望できる。こんな所で家族と共に眠るのも良いかも … などと思いながら帰りの石段を下りた。

 

蒼天の 光煌めき 青もみじ 青モミジの参道 

  木の葉揺らして 弥陀にいざなう (畦の花)

 

 

<参考資料>
・いずみ谷 西寿寺 HP
・『近世畸人伝(正・続)』 (国際日本文化研究センター データベース)
・『国書人名辞典』 第2巻 岩波書店