花園 今宮神社 (右京区花園伊町)
北区紫野にある今宮神社は、4月に行われる「やすらい祭」などで知られて観光客も多いが、右京区花園にも古い歴史を持つもう一つの今宮神社がある。「花園 今宮神社」として「紫野 今宮神社」と区別されている。古くは「祇花園社 (ぎけおんしゃ, ぎはなぞのしゃ) 」や「花園社 (はなぞのしゃ) 」とも称されたという。
JR「花園」駅から北に歩いて5分ほど。南西には法金剛院、すぐ北には妙心寺があり、平安時代には貴族の別業があった地域に建立されている。丸太町通から北に住宅街の道を入っていくと、間もなく右手に石造の門が見え、左脇には立派な「今宮神社」の石柱。ご近所の方が時折通りすがりに参拝をされていく。花園や太秦安井などの産土神として崇められているようだ。
(祭神)素戔嗚尊 (御神徳)厄除開運・家内安全・学業成就・国土安寧
【歴 史】
平安時代の長和4 (1015) 年 都に疫病が流行り、三条天皇の託宣によって疫病を鎮めるために素戔嗚尊を祀る神殿が創建される。
永承7 (1052) 年 再び疫病が流行したため、後冷泉天皇により神社が造営されて御霊会が行われる。
寛永21 (1644) 年 仁和寺門跡 覚深法親王 (後陽成天皇第一皇子) の本願により徳川家光の援助を得て、仁和寺再興の一環として今宮神社の本殿、拝殿、末社 (松尾神社) が造営される。
その後も本殿等の修理修復が何度か行われる。
平成14 (2002) 年 本殿の檜皮葺屋根の葺き替えが行われる。
平成26 (2014) 年 創建1000年を祈念して拝殿の屋根を木賊葺にし、末社・手水舎を修理。
【本 殿】
鳥居を入るとまず拝殿が目に入り、その北側の高みに本殿がある。一間社流造・檜皮葺屋根の本殿は南向きに建ち、その前には瓦葺屋根の拝所が設けられている。棟札・箱に、「寛永21年」の年号と「大壇主征夷大将軍源家光」「大法主長吏入道一品大王覚深」の銘が残っていることから、昭和59 (1984) 年に京都市指定有形文化財となっている。背後を樹木に囲まれた本殿は、それほど大きくはないが厳かな雰囲気を持つ。
【松尾神社 (末社) 】
鳥居を入った左手奥に、大山咋命と倉稲魂大神を祀る末社 松尾神社がある。大山咋命 (おおやまくいのみこと) は山の地主神で、農耕 (治水) を司る神とされ、葛野の松尾に鎮座すると考えられていた。また倉稲魂大神 (うかのみたまのおおかみ) は穀物の神として信仰されていることから、松尾神社は地域の産土神として新たに祭祀されたのだろうか。
さほど広くはない敷地だが、全体に手入れが行き届いていて気持ち良い空間と感じられた。
緑蔭に 鎮まる神に 手を合わせ (畦の花)
<参考資料> 「今宮神社 由緒書き」