十三夜

総記

午後8時過ぎの月

 10月27日は旧暦の9月13日で、「十三夜」にあたる。旧暦8月15日の「中秋の名月 (十五夜の月)」とともに古来より名月とされ、愛でられてきた。十五夜を「前の月」と呼ぶのに対し、十三夜は「後 (のち) の月」と呼ばれ、あわせて「二夜 (ふたよ) の月」とも言う。また里芋の収穫期にあたる「十五夜」を「芋名月」と呼び、「十三夜」には食べ頃の大豆 (枝豆) や栗をお供えしたことから「栗名月」・「豆名月」とも称される。

 今年の十五夜はよく晴れてきれいな月が観られたので、「十三夜」の月も期待していたが、天気予報では午後から雨が降りそうな気配。果たして午後3時頃から俄かに暗くなり、雷鳴も聞こえてきた。やがて雨が降り出し「今夜は月は見られないか …」とちょっぴりがっかり。‥ ところが、夕食も済んだ午後8時過ぎ、ふと夜空を見るとすっかり晴れ渡った夜空に煌々と輝く月が!!十五夜の月より少し高いところにあるようで、右下に一際明るい星も見える。木星かな?28日と29日には、木星に月が近づくらしいので … 。

 そもそも「十五夜の観月」の風習は、中国の「中秋節」が平安時代に日本に伝来し、貴族などの間で観月の宴や舟遊びが行われるようになったのに始まるという。その一方、満月になる前の少し欠けた月を愛でる「十三夜」の月見は、日本独特の風習
 江戸時代後期に幕命により屋代弘賢が編集した類書『古今要覧稿』には

 九月十三夜月を賞することは延喜十九年内裏にて月の宴せさせ給ひしぞ始めなるべき
躬恒集にみえたり 中右記には寛平法皇の仰より明月の夜とすとみえたり

と記されている。であれば、平安時代のかなり早い時期から「十三夜」は日本人に賞せられていたと言えるのかも。秋の終わりの風情と満月に少し欠ける月の「あわれ」が、日本人の感性・美意識によく合ったのかもしれない。
 などと思いつつ用意してあった和菓子をいただく。小さな幸せ!

 就寝前もう一度夜空を見上げると、月はさらに高くなり、きれいに輝いていた。

  雨止みて 夜空にかかる 後の月 常無きこの世 静かに照らす  (畦の花)

午後11時を過ぎた頃の月

 

<参考資料>
『古今要覧稿』 巻第92 歳時部 八月十五夜 屋代弘賢 著, 国書刊行会 校, 明38-40  (古今要覧稿 第2巻 国立国会図書館デジタルコレクション)