退蔵院 (右京区花園妙心寺町)

京都・寺社

臨済宗妙心寺の塔頭。応永11(1404)年、妙心寺第3世無因宗因禅師の開山になるが、応仁の乱により炎上。1597年に亀年禅師によって再建された。
退蔵院 山門妙心寺南門をくぐるとすぐ左手に、端正な退蔵院の山門(「薬医門」)が目に入る。門を入った時は、こじんまりとしたお寺に思えたが、方丈に足を踏み入れると第一印象は大きく裏切られる。剣豪・宮本武蔵も修行をしたと伝わる方丈では、山水画の始祖とされる如拙が足利義持の命により描いた禅の公案『瓢鮎図(ひょうねんず)』(国宝、展示は模本)を目にすることができる。武蔵はこの図を前にして、どんな思いを巡らしたのだろうか。

退蔵院のもう一つの見所は、趣の異なる二つのお庭だ。まず一つ目は、方丈に面した「元信の庭」。室町時代の画家・狩野元信が70歳近くになって作庭した枯山水庭園だそうだが、常緑樹が多く植えられていて緑が美しい。そしてもう一つのお庭は、「昭和の小堀遠州」と称えられた造園家中根金作が作庭した「余香苑」。方丈の南側に広がるこのお庭は、850坪にも及ぶ池泉回遊式庭園。小さな門の前に立つと、大きな紅しだれ桜が迎えてくれ余香苑る。そしてその桜の左右には、陰陽の庭。色の異なる敷砂と置石で「陰」・「陽」それぞれの世界を表した禅寺らしい枯山水のお庭だ。樹々に囲まれた緩やかに下る小道を進んで行くと、右手に売店、その奥にお茶席の建物が見えてくる。左手には池。『瓢鮎図』の瓢箪をモチーフとしているようでその名も「ひょうたん池」。池の西側(正面)にある藤棚から一望すると、まるで里山のようで表情豊かなお庭。一年を通して様々な花々も楽しめるようで、是非四季折々に訪れてみたい。