なごりの桜
嵐電の「桜のトンネル」や御室川を彩ったソメイヨシノは、先日の強風で今やすっかり葉桜。遅咲きで知られる御室桜も盛りを過ぎたようで、なごりの桜を求めて散歩に出かけることに。
五智山蓮華寺に珍しい緑色の花を咲かせる「御衣黄(ギョイコウ)桜」があると知り、もしやまだ咲いているかも?と訪れてみたら … 五智如来石仏の横で風に揺れていた。江戸時代に仁和寺で栽培されたのが始まりとされる「御衣黄」は、八重桜で、開花したばかりの頃は淡い緑色だが、やがて黄色に変わり、花の中心部が濃いピンクに色づく。遠目には目立たないが、近くで眺めると黄緑、黄色そして濃いピンクのコンビネーションが愛らしい。
南側の参道横に咲く御室有明(?)も、なだらかな坂道をきれいに彩っている。
五智如来 萌葱に染まる 春の日や (畦の花)
仁和寺の駐車場は、「御室花まつり」で満車に近い状態。川端康成はその著書『古都』で、主人公の父に「御室の桜を見たら、春の義理がすんだ」と言わせている。あまりの人の多さと花見の宴会騒ぎに閉口して、思わず洩らした一言。これには同感!
2020年に仁和寺から嵐電「御室仁和寺駅」に寄贈された「御室桜」が、今年も開花したというニュースを思い出し、ちょっと遠回りして寄ってみることに。
駅舎入り口の東側に、まだ若木だけれど淡いピンクの花をつけている御室桜が迎えてくれた。生垣のドウダンツツジの愛らしい白い花とよく似合う。木の傍には「御室のさくら」の説明もある。
ちなみに「御室仁和寺駅」は、2002 (平成14) 年に第三回「近畿の駅百選」に認定されており、開業した大正時代の風情が残るレトロな駅。
とりあえず「御室桜」も見て「義理が済んだ」と思いつつ帰る道すがら、「宇多野駅」付近で、濃いピンクの八重の花が満開に咲き誇っている3本の桜の木に出会う。「関山(カンザン)」のようだが、まるで桜三姉妹。
「桜のトンネル」は終わっても、まだまだ楽しませてくれる嵐電沿線だった。
緑なす 野辺の坂道 くだり来て
花のさかりぞ 驚かれぬる (畦の花)